ふくい越前の小さな粉屋が目指す夢

ふくい越前の小さな粉屋が目指す夢

蕎麦を通してつながる喜び笑顔と蕎麦のある風景を

以前、福井商店街活性化事業にて過去・現在・未来を思い出したものを書き出し、ライターさんとヒアリングしながら作成していただきました小冊子、「福井銘舗知られざるストーリー」に、ふくい越前の小さな粉屋の過去と現在、そして目指すべき未来の夢をまとめていただきました。

蕎麦を通してつながる喜び笑顔と蕎麦のある風景の記事

 私はこんな風景を夢見ています。「増田そば製粉所」で繰り広げられる、蕎麦打ちのある素朴な風景。ワイワイ言いながら蕎麦を打つ地元の人たち、展示スペースで道具選びに余念のない若者、食事処でおいしそうに蕎麦をすする家族連れ、色んな世代の人Cたちがいろんな形で「蕎麦」と触れ合い楽しむ姿、そんな風景をこの場所に作りたいと思っています。

 私がそば製粉所を始めたのはひょんなきっかけからでした。もともと建設業を営む両親の元に生まれ、長男である私は後継を前提に家業に入りました。「人々の生活が便利になる」との思いで懸命に打ち込みましたが、思いとは裏腹に苦労が報われることの少ない仕事でした。近年の不況の風も当然、建設業界にも吹き荒れ、経営は厳しくなっていきました。

 そんな中、父が趣味で始めた蕎麦製粉が思いのほか反響が大きく、インターネット販売に不慣れな父に代わり、私がお客様の対応をするようになりました。そこにあったのはお客様からの感謝の言葉や喜びの声、そして暖かい人とのつながり。それは初めて得た感覚でした。私は苦しい情勢の中、この世界には目に見えない価値と可能性がある、そう感じ業種転換に踏み切りました。

 経験がないながらも、品質と丁寧な仕事にだけはこだわり、地元の農家さんに教わりながら玄蕎麦を自家栽培、徹底した品質管理を行いました。そして石臼挽きできめ細かく香味豊かな粉へと仕上げる。

 ただ支えてくれた人や待っていてくださるお客様のために心を込めて。それは今でも同じです。今では日本全国北から南まで、「打つ度に感激」「一心な気持ちが伝わる」といった声が大きな糧となっています。

 これからも蕎麦を通してたくさんの人とつながりたい。ここを蕎麦に関わるすべての体験・遊びができる施設へと変え、自分の粉で喜んでいただきたい。そして、冒頭に記した風景を慌ただしく仕事をしながらも、幸せな気持ちで眺める自分がいることを夢見ています。

増田そば製粉所 増田浩庸