(続き)蕎麦についての資格「蕎麦鑑定士認定試験」というものがある。

「蕎麦鑑定士の試験は東京と京都で行われる」

前回の続きとなります。
私は福井県からの参加でしたので、「蕎麦鑑定士」認定試験は京都会場の方にて受講しました。次の週には東京会場でもあるようです。

「認定試験のテーマは”全粒粉を知る”」

当日は早速お待ちかねの12種類の蕎麦切りを食味体験です。
認定試験のテーマは「全粒粉を知る」でした。蕎麦の原点は殻ごと挽いた「玄挽き」にあるということで、そこから工夫してヌキ(抜き実)を作るようになり、製粉技術が進むにつれ、蕎麦の種類のバリエーションが豊かになります。今回の蕎麦の食味試験では蕎麦の実をまるごと挽いた「全粒粉」を使った様々な蕎麦を体験できるとのことでした。

全粒粉には大きく2種類に分けられます。ひとつは殻ごと挽いた「玄挽き(げんびき)」の全粒粉。もうひとつはヌキ(抜き実)にしてから製粉した全粒粉。どちらのそば粉で打ったお蕎麦も製粉の仕方により、食味・色・香り等色々大きく変わります。また、打ち方(生粉打ち・二八蕎麦)でも違ってきます。今回はその違いを体験できるとのことでした。

冊子「蕎麦の力を科学する」

「食味試験での12種類のお蕎麦の種類」

玄挽きで仕上げた蕎麦粉のお蕎麦
(1)奈川在来種(微粉)生粉打ち
幻の蕎麦といわれる長野県奈川村の在来種。50メッシュのふるいで仕上げ。
(2)こそば(粗挽き)生粉打ち
新潟県の妙高山麓に細々と受け継がれる貴重な在来種。40メッシュのふるいで仕上げ。
(3)大野在来種(微粉)二八
ご存知、福井県在来種(大野産)。50メッシュのふるいで仕上げ。
(4)奈川在来種(粗挽き)二八
奈川在来種を30メッシュの粗目の仕上げ。

ここからはヌキ(抜き実)を挽いたお蕎麦です。
(5)キタワセ(微粉)生粉打ち
玄ソバ生産量では一番の北海道。石狩沼田産のキタワセを50メッシュで仕上げ。
(6)常陸秋そば(粗挽き)生粉打ち
常陸秋そばといえば、茨城県が全国に誇るブランド品種。30メッシュの粗目の仕上げ。
(7)キタワセ(微粉)二八
上記にありますキタワセを二八打ちにて。
(8)常陸秋そば(粗挽き)二八
上記にあります常陸秋そばを二八打ちにて。
(9)中国産・マンガン種(微粉)二八
中国内蒙古自治区で栽培されたお蕎麦で品種はマンガン種。中国から輸入される蕎麦としては一般的なお蕎麦です。50メッシュにて仕上げ。

ここからは茹で時間による食味の変化を食味
(10)キタワセ(微粉)二八茹で時間過多
キタワセを茹で時間を適正な時間から30秒オーバーで茹でたお蕎麦。
(11)キタワセ(微粉)二八茹で時間適正
キタワセを適正な時間で茹でたお蕎麦。
(12)キタワセ(微粉)二八茹で時間不足
キタワセを茹で時間を適正な時間から30秒不足で茹でたお蕎麦。

蕎麦生産地の種類では6種類、打ち方では2種類、挽き方では2種類、茹で方では3種類のお蕎麦を体験できました。
※「メッシュ」とは1インチ(2.54cm)の間に編目が何本通っているかを示す数字で、30メッシュと50メッシュでは50メッシュの方が細かく、よりキメ細やかな蕎麦粉になります。弊社の特選そば粉挽きぐるみでは更に上の60メッシュにてそば粉を篩い仕上げております。

「玄ソバの産地による違い」

玄ソバの生産地による味や香りに違いがあるのかなぁと思いましたが、私の鈍い味覚(冷汗)でもこうして同じステージで食べ比べてみますと違いが何となくわかりました。奈川・こそば・福井(大野)との順に食べ比べてみましたが、どのお蕎麦も香り風味豊かでひと口噛むと、口の中に広がる蕎麦らしい味わいが素晴らしくて、それぞれが本当に素晴らしいお蕎麦でした。

キタワセは若干あっさり軽めですがこれも独特の個性があって美味しかったです。常陸秋そばがすっきりとしていながら香り風味も良く上品さを感じさせながらも蕎麦本来の美味しさが詰まっておりました。中国産の蕎麦でございますがやはりイメージ的には・・・という感じを持っておりましたが食味してみますと、香り風味もそんなに悪くなかったように感じました。食感が若干ざらつく?ボソつくような感じでした。しかしどの産地の蕎麦も素晴らしく、初めて食べてみる品種もありとても楽しめました。

「蕎麦の打ち方と配合による違い」

打ち方によりますと生粉打ちと二八打ちでは食感が全然変わってきます。生粉打ちはシャキッとしたようなコリッとしたような歯切れの良い食感が素晴らしいです。二八打ちはつなぎ粉を加えた分絶妙な粘りを持ったコシで、モッチリしていてするりとのどを通りすぎて行く。流石は二八打ちの配合は蕎麦の黄金比率とは良くいったものです。

十割蕎麦での良さ、二八蕎麦での良さ、それぞれの良い所が感じられて一概に「蕎麦は十割が良い!」「二八が基本!」とは言えません。それぞれの良さと違いをその都度楽しむのが良いんだなぁと感じました。因みに弊社ではつなぎ粉を一割だけ加えた九割蕎麦をオススメしております(生粉打ちと二八打ちの良い所を楽しめます。)

「そば粉の挽き方や茹で方による違い」

挽き方では粗めに挽いた蕎麦粉とキメ細やかに挽いた蕎麦粉では全然食感が変わってきます。同じ産地の蕎麦でも挽きによって食べた感触や香り風味が変わってくるのが非常に面白かったです。

茹で方の違いにつきましては、茹で時間をオーバーしたものは当たり前ながらコシも無くなり、食べた時の食感が全然違います。また香りも逃げてしまっているような気がしました。茹で時間が不足したものにつきましては味や香りはあるものの蕎麦自体が硬すぎて芯が残っているため、噛み締めるとニチャニチャしたようなかんじがしてこれまたイマイチな感じがしました。茹で時間のわずかな違いでお蕎麦が大きく変化してしまいます。いつもベストな茹で時間でいつもお蕎麦を茹で上げているお蕎麦屋さん達は凄い!

「蕎麦の世界は難しくありながらも面白い」

お蕎麦という食べ物は、どこの産地で栽培したか、その年の気候、播種時期や収穫のタイミングなどによって大きく違ってきます。さらには製粉の方法、蕎麦を打ち上げる技術によって蕎麦ってこんなに違うものなんだと感じました。でも、そういうところが蕎麦の難しさでもあり、面白さでもあります。

「栄養学と出汁取りやそばつゆについての講座も」

また、その後の講習会では神戸学院大学栄養学部の池田清和先生と池田小夜子先生の、蕎麦の栄養学と蕎麦の食事学の講座を聞かせていただきました。そして、鰹節で有名な(株)マルサヤさんから材料や出汁取りなどそばつゆについての講座もあり興味深く聞かせていただきました。このように丸一日をお蕎麦の事について興味深く勉強させていただきました。蕎麦の世界も本当に奥が深い!そして面白い!そのように感じた一日でした。